IADL「買い物」問題点と対応方法
目次
買い物とは
買い物とは「お金と交換で自分の好きな物を手に入れる」ことを指します。
では、「好きな物」とは?日々の食材や日用品など、生活に欠かせない物。オシャレな服や趣味の道具など、生活をより豊かにしてくれる物。特に買う物を決めないウィンドウショッピングなんかもありますね。
直接お店に買い物に行くだけではなく、ネットショッピングなどの通信販売や訪問販売などがあります。また、支払い方法に関しても、現金だけではなく、クレジットカードや電子マネーなど様々な方法が広がってきています。
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買い物動作の分析
買い物動作を分析する為には、以下のように各工程を細かく分ける必要があります。今回は、「自宅で食事を作る為に買い物に行く」を例に考えていきます。
- 買う必要がある物のピックアップ(買い物リスト作成)
- 買い物リストにあがった商品を買う為に必要なお金の準備
- 買い物リストにあがった商品が買える店舗のピックアップ
- 店舗までの移動
- 店舗内にて必要な商品を探す
- 買い物カゴに商品を入れて移動
- レジにて支払い
- 購入した商品の袋詰め
- 購入した商品を持ち帰る
- 購入した商品を保管(保存)
①「買う必要がある物のピックアップ(買い物リスト作成)」分析
まずは、「何が(種類)」「どれだけ(量)」「いつまでに(緊急度)」必要なのかを適切に検討する能力(認知機能)が求められます。例えば、3日分の夕食を作る為の食材を購入するとします。
- 3日分の夕食の献立を考える
- 考えた献立を作る量(何人で食べるのか?作り置きもするのか?)を考える
- 考えた献立を作る為に必要な食材を考える ※食品の賞味期限も考える 例)3日目に刺身を食べようは×
- 必要な食材が冷蔵庫の中など既にあるのかを確認する
- 「必要な食材」ー「既にある食材」=「買い物する食材」
②「買い物リストにあがった商品を買う為に必要なお金の準備」分析
買い物リストにあがった商品を買う為に必要になるお金を大まかにでも把握して準備する能力が求められます。
- 商品ごとの大まかな金額を計算する
- 必用な金額が財布の中にあるか確認する
- 金額が不足している場合の対応⇒「買う商品を減らす」or「銀行などでお金を下ろす」
③「買い物リストにあがった商品が買える店舗のピックアップ」分析
買いたい商品が売っている店舗をピックアップします。加えて、ただ買えるだけではなく、出来るだけ安く買えること(毎回コンビニでは金額up)や、移動距離が短い店舗を選ぶ(帰りは買った商品も加わる)ことも必要となります。
④「店舗までの移動」分析
移動手段の検討、店舗までの適切なルート設定、安全な移動などの能力が求められます。
- 徒歩⇒移動能力。福祉用具(車椅子など)⇒移動や操作能力。自家用車⇒運転能力。公共交通機関⇒乗車能力や支払い能力
- 店舗までの最短距離がベストだが、ルートの安全性など総合的な判断が必要
⑤「店舗内にて必要な商品を探す」分析
最近は店舗の大型化など、目当ての商品を探すことが難しくなっています。行き慣れた店舗であれば商品配置を記憶する。慣れていない店舗であれば、案内表示の利用や店員さんに尋ねるなど、買い物リストにあがった商品を効率良く探す能力が求められます。
⑥「買い物カゴに商品を入れて移動」分析
店舗内では、購入予定の商品を買い物カゴや買い物カートに入れて移動する必要があります。また、店舗内ではお客さんで混雑しているうえに自分自身も右に左に複雑な動きをします(商品を探している)。
店舗内を「移動する環境」と考えた場合、極めて特殊な環境であると言えます。特殊な環境を移動する為には特に安全に配慮した方法(能力)が求められます。
⑦「レジにて支払い」分析
レジでは「早く支払いをしなければ!」というプレッシャーがある為、小銭やお札の扱いで失敗(もたついたり、落としたり)する可能性があります。支払いに必要なお金を計算する認知機能に加えて、財布の中からお札や小銭を素早く出す為に、両上肢や手指の巧緻性(細かな動き)が求められます。
⑧「購入した商品の袋詰め」分析
購入した商品で、固い物や重いものは下に。柔らかい物や軽い物を上に入れるなど入れる順番を工夫する必要があります(認知機能)。また、スーパーなどのビニール袋を広げて商品を入れていくには、両上肢や手指の協調した動きが求められます。
⑨「購入した商品を持ち帰る」分析
上記④の能力が同様に求められます。更に購入した商品を持って帰る必要がある為、思い荷物を持ったうえでの上記④の能力が求められることになります。
⑩「購入した商品を保管(保存)」分析
購入した商品の種類に応じて、常温保存なのか?冷蔵保存なのか?冷凍保存なのか?などを判断して必要な保管方法をとる必要があります。
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買い物動作別の対応方法
①「買う必要がある物のピックアップ(買い物リスト作成)」対応
献立を考える為には複数の項目を適切に検討する高度な認知機能が求められます。逆から考えると、項目ごとに分解することで、問題をハッキリとさせることが出来るうえに、具体的な対応も可能となります。
- 1日ごとの献立⇒買い物の頻度は増えますが、「買い物=外出機会」と捉えることも出来ます。いずれにしてもお店が比較的近くにあるなど、買い物が大きな負担にならないことが前提となります。
- 同じ献立を続ける⇒多めに作ることで、数日同じ献立を続けます。栄養の偏りなども考えられますが、副菜は日替わりにするなど、工夫することで対応は可能かと思います。
- 保存性の高い商品を優先⇒冷凍食品、缶詰、乾物などを購入することで、使用期限に捉われずに献立を検討することが可能となります。
- 火を通すだけの食材⇒食材などが刻んだ状態で入っており、火を通して味付け(調味料もあり)をするだけで、出来立ての料理を食べることが可能です。献立などを考える必要もなく調理の手間も随分省かれます。ただ、自炊と比べると値段は相応に上がる為、取り入れる頻度は検討が必要かもしれません。
- 中食の検討⇒スーパーやコンビニの総菜など火を通さずに食べることができる商品です。全てを中食にすると、栄養面や経済的に問題が出てくるかもしれませんが、献立の一部など上手に取り入れると良いかもしれません。
- 配食の検討⇒献立を考える必要もなく、栄養管理の行き届いた食事を家まで届けてもらえます。ただ、全てを配食にするのではなく、夕食だけ、週に3日だけなど、自炊と上手く組み合わせる方法もあります。
②「買い物リストにあがった商品を買う為に必要なお金の準備」対応
- メモを活用する⇒購入予定の商品を書き出します。商品の横に値段を書いていって合計金額を出します。そのうえで財布の中身(残金)と照らし合わせます。頭の中だけで考えるよりも、落ち着いて正確に合わせることが出来ます。
- 現金以外の方法も検討⇒電子マネーやクレジット対応の店舗が増えています。カード一枚で支払いを済ますことが出来る為、慣れれば便利な物です。ただし、チャージが必要など慣れない作業も増える為、導入には慎重な検討が必要です。
③「買い物リストにあがった商品が買える店舗のピックアップ」対応
本来であれば、日々の広告チラシなどから安く買える店舗を探したり出来ればベストです。難しい場合は、購入する商品のカテゴリーごとに店舗を固定すると利用し易くなります。
地図上に色分けをして管理(赤⇒お肉屋さん、青⇒魚屋さん、緑⇒八百屋さんなど)するのも手です。また、スマホを利用できるのであれば、スマホの地図上にマーキングすることも可能です。加えて、スマホでは目当ての店舗までナビをすることも出来ます。
④「店舗までの移動」対応
普段から屋外で行っている移動方法(独歩・杖・歩行器・車椅子など)で移動可能な場所で店舗を探すのがベストです。難しい場合は、代わりの手段(バスやタクシー)の使用も検討する必要があります。⑥「買い物カゴに商品を入れて移動」でも後述しますが、専用のシルバーカーなどを利用するのも手です。
ただ、バスやタクシーの利用は慎重に検討する必要があります。いずれも利用には双方の負担(身体的・経済的)が発生します。無理をせずに宅配などを検討することも手です。
⑤「店舗内にて必要な商品を探す」対応
購入商品は事前にリストアップされているので、店舗内の移動ルートも事前に計画しておくと効率的です。大半の店舗は自身のホームページを持っており、店舗内の商品配置状況も公表してあることも多くなっています。
⑥「買い物カゴに商品を入れて移動」対応
手にカゴを持って行動するのは避けた方が良いでしょう。買い物カートを利用する方が良いでしょう。ただし、店舗用のカートは大きくて扱いづらい物もあります。自身専用のシルバーカーなどを使用することで(買い物カゴを置けるタイプ)より安全に移動することも可能です。
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また、店舗が混雑している時間を避けるのも重要です。店舗ごとに混む時間や曜日がある程度決まっていることが多いので、それらを調べてから行動するようにしましょう。
⑦「レジにて支払い」対応
クレジットカードや電子マネーの利用をオススメします。キャッシュレス化に関しては、現金を扱う必要がなくなるだけでなく、2019年の消費税増税対策として5%ポイント還元案などが検討されています(平成31年2月現在)。また、スマホでの決済なども可能となるため検討してみても良いでしょう。
⑧「購入した商品の袋詰め」対応
エコバックの利用をオススメします。レジを通す際に店員さんにそのままエコバックに入れてもらえば簡単です。前述したシルバーカーを利用している場合はそのまま中に入れてしまえばOKですが、そうでない場合はリュックになるタイプが便利でしょう。帰りの道のりは両手が空いている方が安全に移動することができます。
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⑨「購入した商品を持ち帰る」対応
前述した、シルバーカーやリュックタイプのエコバックなどの利用をオススメします。その他、店舗によっては有料で自宅まで購入した商品を配送するサービスもありますので検討してみても良いでしょう。
⑩「購入した商品を保管(保存)」対応
前述した、①「買う必要がある物のピックアップ(買い物リスト作成)」の段階にて保存方法も同時に考えておくことが重要です。事前に保存方法も決まっている為、疲れて帰って来てもスムーズに行うことができます。
買い物動作のまとめ
私達が日頃何気なく行っている買い物も、障がい者や高齢者の状況(能力)によっては難しい動作となります。買い物動作を工程ごとに細かく分けて分析することで、より具体的な対応方法を検討することが出来るようになります。
自身で買い物を行うことは、単に商品を購入するだけではなく、「楽しみ」であったり「役割の獲得(主婦としてなど)」など様々な意味を持つことにも繋がります。「危ないから」と直ぐに諦めるのではなく、出来る方法を積極的に検討していくことが大切だと考えます。